
ここにきて、「完全にWebサービスはスマホ時代に突入した」と言ってもいいのではないでしょうか。
スマホ普及率は50%を超え、PCよりスマホのPVが上回っている大手メディアがどんどん増えています。
スマホの存在により、誰もが手軽にネットに接続することができるようになり、1人あたりのインターネット接続時間は大幅に増加したのは、インターネットの誕生による情報革命の第1章PC編が終わり、第2章スマホ編が始まったと言っても過言ではありません。
つまりビジネスチャーンス!!ということで、最近のスタートアップはスマホをベースとしたサービスが増えてきました。
スマホを使ったサービスの場合、大きく分けてブラウザベースかアプリベースかに分かれることになります。
実は私も会社でスマホアプリをベースとした事業を行っていました。
結果的には仮説が外れていることが判明したので、4ヶ月ほど運営してクローズということになったのですが、この事業経験を通して学んだ、「スマホアプリビジネスで成功するために必要なこと」を書きとめておきたいと思います。
アプリのマネタイズについて
アプリのマネタイズもWebと同じで、大きく分けて課金モデル、EC、広告モデルの3パターンがあります。
課金モデル
課金モデルに関しては、iPhoneであればapple経由の課金となるので、appstoreのセールスランキングの順番がそのまま”稼いでるアプリ順”になります。
ランキングの上位を見ると、ゲームアプリかデーティングアプリしか無いことに気づきます。
やはりユーザーに課金するというのは、とてもハードルが高いことです。
ゲームの射幸性や男女間の出会いなど強烈な誘引があるサービスでないと課金モデルとして成功するのは難しいでしょう。
課金モデルの場合、主要なKPIはARPUとアクティブ率になります。
つまりDLしてくれた人が、どれだけそのアプリを利用してくれて、どれだけお金を払ってくれるかが重要ということです。(当たり前ですが・・・)
EC
ECに関しては基本的にはブラウザベースで十分であり、アプリにする必要はあまりありません。
むしろブラウザの場合はマーケティング手段として商品名などでのSEOによる流入が見込めますが、アプリのみにするとSEOが見込めないので、アプリネイティブでのECサービスというのは考えにくいと思います。
ただフリマアプリはアプリネイティブのサービスにするメリットがあります。
特にメルカリやフリルのターゲットとするライトなユーザー層が使うフリマアプリは、出品・落札の容易さや操作感がとても重要だからです。
アプリとブラウザの大きな違いとして、機能面があげられます。(特にiPhone)
アプリのほうが使える機能が多いのです。
例えば、メルカリで出品しようとしたときにメルカリアプリの中で、商品の写真を撮影するためにカメラ機能を立ち上げることができます。
Safariなどのブラウザではこういった他の機能を呼び出したりすることができません。
またアプリは画面遷移の挙動などについても自由に設定することができますが、ブラウザでは決まった遷移の仕方になってしまいます。
ここはSeachmanの柴田さんのFacebookでの発言が一番わかりやすいです。ブラウザは競争が無いから進化スピードが遅いけど、アプリは競争が激しいから進化スピードが速い。そういった意味では今後も機能面でのアプリの優位性は続くのかと思います。
https://www.facebook.com/shibataism/posts/10152781499887648?fref=nf&pnref=story
ウェブ vs アプリという議論で必ず出てくる話が「短期的には全部アプリ、中期的にはウェブに流れる」という話が良くある。
僕もそう思っていたんだけど、最近少し考え方が変わってきた。
というのは、
1) ハードウェアやOSのレベルでは、競争が凄まじいので、信じられないくらいスピードでイノベーションが進む。OSもハードも毎年信じられないスピードで良くなる。(iOS vs Google, Samsung vs Xiaomi vs Apple etc)2) アプリの世界も、プラットフォームはもう2つで固定されていて、その上での競争が凄まじいので、イノベーションが凄い勢いで進む。
3) ブラウザそのものは、競争がほぼゼロなので、進化しない。iOSではSafariがほぼ100%シェアだろうし、androidなら Chrome。Safariチームは、Chromeよりも良くしないと死ぬ、ということにはならない。何故ならiOSの中ではデフォルトだから。
これって、IEがWindowsで標準に入った時と同じで、競争がないというのは辛いんですよね。多分、未だにIEしか無かったら、Ajaxとかこんなに進化しなかったと思う。iOS Safariが昔と比べてすげー良くなった気が全くしないんですよ。少なくてもiPhone(ハード)やiOSの進化に比べて、圧倒的に遅いでしょ?
というわけで、まとめると、いいか悪いかは置いておいて、多分、スマホのウェブアプリの進化というのは、皆が期待しているようには進みませんぜ(なので、とりあえずアプリ側に全部張るしかないよね)という話でした。
メルカリの話に戻りますが、ブラウザベースのCtoCプラットフォームとしてはYahooオークションの独壇場でした。
しかし、Yahooオークションはスマホ最適化されておらず、アプリベースのCtoCプラットフォームはユーザーニーズがあったということだと思います。
ただメルカリの成功要因はビジネスモデルに加えて、後述する”マーケティング”によるところも大きいです。
広告モデル
アプリの中で最も多いのが広告モデルのアプリです。
私が運営していたアプリも広告モデルでした。
代表的な広告モデルのアプリとしては、Gunosy、Smartnewsなどのニュースキュレーションアプリが挙げられます。
広告モデルのアプリサービスで最も大事なことは、広告の質と広告の面の2つになります。
広告の質
広告の質とは、コンバージョンの高い、収益性の高い広告を提供できるかどうかということです。
スマホアプリの広告は現時点ではバナー広告が最も多く、リタゲ効果があっても、コンバージョンはよくて数%前半だと思います。
ニュースキュレーションアプリはネイティブ広告や動画広告でコンバージョン率の高い広告を提供しようとしています。
ただネイティブ広告の場合、ランディングページへユーザーを飛ばす前に広告記事を挟むので、バナー広告に比べて1ページ挟むぶんだけページ遷移による離脱率が増えることになります。
それを入れてもバナー広告よりコンバージョンの高い広告とするためには、記事のクオリティを高くする必要があります。
ちなみにアメリカだとニューヨーク・タイムズかなんかもネイティブアドを行っていて、記事のレベルがめちゃめちゃ高く、コンバージョンもよさそうだなと思いました。
http://blog.logly.co.jp/20150224/000012
広告の面
今回の記事で皆様に最もお伝えしたかったのはこの部分になります。
広告モデルでは、やはりユーザーに広告を見せてナンボになります。
つまり、「アプリを起動する頻度×時間」が高ければ高いほど、広告の収益性が高いアプリになります。
この観点から考えると、アプリとニュースの相性ってめちゃめちゃいいじゃん!ってことに気づきます。
私自身ニュースは1日に何回か見ますし、時間としてもまぁまぁな長さをニュースなどの情報のインプットに費やしています。
ニュース以上に「アプリを起動する頻度×時間」が高いサービス分野は無いように思います。(あと雑誌くらいでしょうか。)
広告モデルのアプリで成功するのは間違いなくニュースキュレーションアプリでしょう。
アプリのマーケティング
アプリとWebの決定的な違いがあります。マーケティングです。
アプリのマーケティングは、一部ユーザーニーズの強いプロダクトで口コミでDL数が増えていくものもありますが、基本的には広告に頼ることになります。
アプリの広告は大きくわけるとリワード広告とディスプレイ広告の2つです。
リワード広告は、お金を払ってユーザーにアプリを短期間に多数DLしてもらい、アプリランキングを人為的に上げて露出させることで、更なるDL数を獲得する手法です。
ディスプレイ広告はバナー広告やFacebook広告などを指します。
どちらの広告手法もお金がかかります。ゆえにアプリで成功するには、しっかりとマネタイズができる収益性が高いサービスでないと難しいです。
相場としては、1DLあたり300〜500円(この指標をCPIといいます)ほどはかかります。
体感としては、Facebook広告のほうが、細かくターゲティングができることもあり、CPIは抑えられる傾向にあります。
しかし、リワード広告とディスプレイ広告にも限界があります。
在庫という概念が使われますが、上記2つの広告では300万DLぐらいが限界でしょう。
ちなみにCPIはDLが増えれば増えるほど高くなります。
そこで、更なるスケールをするにはTVCMをするしかないことになります。
昨今、スマホゲームはもちろん、Gunosy、Smartnews、メルカリがTVCMを出しているのは皆様ご存知だと思います。
アプリとWebの決定的な違いとは、マーケティングによる顧客の流入経路にあります。
つまりアプリはSEOやSEMという概念が基本的には無いので、何かを探している能動的なユーザーに露出できないということになります。
ストア内での検索に対してアプリを最適化(ASO)というのもアプリのマーケティング手段としてありますが、アプリを探してDLするというのはまだまだ少なく、やはりランキングやディスプレイ広告で目に止まってDLする人が大半です。
TVCMは更に顕著な受動的ユーザーへのリーチ手段であると言えるでしょう。
そういった意味では、ある程度マス受けする分野のアプリで無いとスケールが難しいことがわかります。
ランキング上位にあったときにそのアプリをDLしてくれるか、TVCMで見たときにそのアプリをDLしてくれるか。
一部の人がターゲットの商材より、マスがターゲットの商材のほうが、上記の広告効果は高いですよね。
一方で、Webの場合は、SEOやSEMがあるので、何かを探している人に対して露出させることができます。
ターゲットがニッチであるサービスも、そのニッチな人にお金もかけず、効率的にリーチすることができます。
受動的なユーザーをターゲットにするサービスか、能動的なユーザーをターゲットにするサービスか、マスをターゲットにするサービスか、ニッチをターゲットとするサービスか。
これはビジネスを考える上において大きく変わってきます。
そういったマーケティング特性から考えても、ニュースキュレーションアプリがいかにビジネスとして優れているかがわかります。
ニュースはあらゆる人が読むもので、ターゲットはマスですし、特定のニュースを能動的に探しに行くというよりは、受動的に与えられたニュースを読むというのが既存のユーザー行動です。
何回も言いますが、ニュースキュレーションは、本当にアプリの特性に合ったビジネスだと思います。
まとめ 僕が広告モデルのアプリ運営を通して学んだこと
最後に、僕が今回の事業失敗を通して学んだ広告モデルのアプリに必要なことをまとめておきます。
- 広告モデルのアプリにおいては、広告の質×面が収益性を左右します。
- マーケティングにお金がかかるので、収益性の高さ(広告の質×面)が必須です。
- 最終的にスケールさせるにはTVCMを打つことになるので、マス受けするサービスがいいです。
今のところ上記の成功要件に最も適合しているのはニュースキュレーションアプリであるように思います。
新しく広告モデルのアプリサービスを考えるときには、ニュースキュレーションアプリのKPIをターゲットにして考えるといいかと思います。